2022年のMLBレギュラー・シーズンが終わりました。大谷翔平選手は最終戦に登板し規定投球回数に達しました。この結果、同一シーズンに規定打席と規定投球回数をクリアーしたMLB史上初の快挙を達成しました。投手としての成績は2021年を上回っています。
2021年の大谷選手の成績
・勝敗:9勝2敗(アメリカン・リーグで29位タイ)
・QS:14(アメリカン・リーグで12位タイ)
・防御率:3.18(アメリカン・リーグで3位相当※)
・奪三振数:156(アメリカン・リーグで19位)
・奪三振率:10.77(アメリカン・リーグで4位相当※)
・与四球率:3.04(アメリカン・リーグで13位相当※)
・被打率:0.207(アメリカン・リーグで2位相当※)
・WHIP:1.09(アメリカン・リーグで4位相当※)
(※の記録は規定投球回数に達していないため公式記録にはなりません。しかし参考のためにランクに入れた場合の順位を示しています。)
2022年の大谷選手の投手成績
・勝敗:15勝9敗(アメリカン・リーグで4位タイ)
・QS:16(アメリカン・リーグで15位タイ)
・防御率:2.33(アメリカン・リーグで4位)
・奪三振数:219(アメリカン・リーグで3位)
・奪三振率:11.87(アメリカン・リーグで1位)
・与四球率:2.39(アメリカン・リーグで15位)
・被打率:0.207(アメリカン・リーグで7位)
・WHIP:1.01(アメリカン・リーグで5位)
データ参照 https://www.baseball-reference.com/players/o/ohtansh01.shtml
候補者の比較
2022年の主要タイトルの比較
では2022年のサイヤング賞の候補となりそうな投手の成績を比較します。まずは投手の三冠王のタイトルと言われる3項目を取り上げます。
勝敗
1. ジャスティン・バーランダー 18勝4敗
2. フランバー・バルデス 17勝6敗
3. アレック・マノーア 16勝7敗
4. 大谷翔平 15勝9敗
7. ディラン・シース 14勝8敗
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league/wins
防御率
1. ジャスティン・バーランダー 1.75
2. ディラン・シース 2.20
3. アレック・マノーア 2.24
4. 大谷翔平 2.33
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league?sortState=asc
奪三振数
1. ゲリット・コール 257
2. ディラン・シース 227
3. 大谷翔平 219
11. ジャスティン・バーランダー 185
12. アレック・マノーア 180
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league/strikeouts
他の項目の比較
QS(クオリティー・スタート)
1. フランバー・バルデス 26
2. アレック・マノーア 25
3. シェーン・ビーバー 23
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league/quality-starts?expanded=true
奪三振率
1. 大谷翔平 11.87
2. ゲリット・コール 11.53
3. ディラン・シース 11.10
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league/strikeouts-per-nine-innings?expanded=true
与四球率
1. コーリー・クルーバー 1.15
2. ケビン・ゴーズマン 1.44
3. ジャスティン・バーランダー 1.49
被打率
1. ネスター・コルテス 0.189
2. ディラン・シース 0.190
2. ジャスティン・バーランダー 0.190
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league/avg-allowed-by-the-pitcher?sortState=asc
WHIP
1. ジャスティン・バーランダー 0.83
2. シェーン・マクラナハン 0.93
3. トリストン・マッケンジー 0.95
データ参照 https://www.mlb.com/stats/pitching/american-league/whip?sortState=asc
候補選手の絞り込み
ジャスティン・バーランダー
・投手二冠王を獲得している点は有利です。負け数も4敗と少なく14勝(18勝-4敗)は、チームの貯金をバーランダーひとりで稼いだことになります。
・三振数は少し劣りますが、これはシーズン途中でIL入りしたため先発登板を3~4回飛ばしたためです。仮に1試合平均8個の三振を奪い4試合登板していたらトップ3に肉薄します。
・1年間ローテーションを守った投手の方を評価する記者もいますので欠場が多少影響するかもしれません。
・他の5項目でも3項目でトップ3入りしています。
ディラン・シース
・防御率、奪三振数ともに2位の成績です。勝利数は14勝で7位ですが、大谷選手と同様にチームが低迷しましたので、この点は不運だったとも言えます。
・1年間ローテーションを守った点は高評価です。
・他の5項目でも2項目でトップ3入りしています。
アレック・マノーア
・勝利数と防御率はいずれも3位の成績です。1年間ローテーションを守り貯金を9勝(16勝-7敗)稼いだ点は評価されます。
・奪三振数はシーズ、バーランダーに劣ります。
・他の5項目でも1項目でトップ3入りしています。
サイ・ヤングの成績
生涯成績(22年)
・勝敗:511勝315敗(1位)
・防御率:2.63(31位)
・奪三振数:2,803(25位)
・WHIP:1.13(28位)
・投球回数:7356.0(1位)
年平均成績
22年間の生涯成績を1年(162試合)でならしてみましょう。
・勝敗:20勝11敗
・防御率:2.63
・奪三振数:111
・WHIP:1.13
・投球回数:291.0
データ参照 https://www.baseball-reference.com/players/y/youngcy01.shtml
投手三冠の成績では奪三振数は意外と少ないようですが、安定した投球で確実に20勝を稼ぐ投手だったと思います。現代野球との違いは、投球回数が異常に多いこと、つまり先発完投が日常だったと言えます。
甲乙つけがたいですが、安定した投球で確実に勝利を稼ぐ投手と言う点からは、バーランダー、マノーア、シースの順位と言えます。
クローザーは不利⁉
上記のサイ・ヤングの時代はセット・アッパー、クローザーの明確な役割分担が無い時代です。サイ・ヤングも先発完投型の投手であることから、セット・アッパー、クローザーの選手がサイヤング賞を獲得するのはかなり難しいです。最も新しいクローザーのサイヤング賞は19年前のエリック・ガニエです。
しかし、よくよく調べてみますと1992年のデニス・エカーズリー以前は約3年のペースでクローザーがサイヤング賞を獲得していました。さらにサイヤング賞とMVPをダブル受賞している選手が3名いました。大谷翔平選手にも十分チャンスがあります。2023年はダブル受賞を挑んで頂きたいですね。
2003年 エリック・ガニエ(1位票28票・30票中)
勝敗:2勝3敗55セーブ 防御率:1.20 投球回数:82.1 奪三振数:137
1992年 デニス・エカーズリー(1位票19票・28票中)
勝敗:7勝1敗51セーブ 防御率:1.91 投球回数:80.0 奪三振数:93
※エカーズリーはこの年MVPも獲得しています。
1989年 マーク・デービス(1位票19票・24票中)
勝敗:4勝3敗44セーブ 防御率:1.85 投球回数:92.2 奪三振数:92
1987年 スティーブン・ベドローシアン(1位票9票・24票中)
勝敗:5勝3敗40セーブ 防御率:2.83 投球回数:89.0 奪三振数:74
1984年 ウィリー・ヘルナンデス(1位票12票・28票中)
勝敗:9勝3敗32セーブ 防御率:1.92 投球回数:140.1 奪三振数:112
※ヘルナンデスはこの年MVPも獲得しています。
1981年 ローリー・フィギンス(1位票22票・28票中)
勝敗:6勝3敗28セーブ 防御率:1.04 投球回数:78.0 奪三振数:61
※フィギンスはこの年MVPも獲得しています。
1979年 ブルース・スーター(1位票10票・24票中)
勝敗:6勝6敗37セーブ 防御率:2.22 投球回数:101.1 奪三振数:110
1977年 スパーキー・ライル(1位票9票・28票中)
勝敗:13勝5敗26セーブ 防御率:2.17 投球回数:137.0 奪三振数:68
1974年 マイク・マーシャル(1位票17票・24票中)
勝敗:15勝12敗21セーブ 防御率:2.42 投球回数:208.1 奪三振数:143
(※勝数、投球回数の多い選手もいますが、先発登板をしていません。)
WARならば
別のコラムで、MVP争いはジャッジと大谷は純粋に「比較できない」と言いましたが、成績が拮抗すると投手の評価も難しいです。ではここでもWARで比較したいと思います。WAR は選手の価値を定量化するものです。投手、野手の価値基準、野手でも守備位置の違いにより価値基準を考慮します。今回のコラムでは細かな説明を省きますが、WARはすべての選手を極力同等に比較できるようさまざまな数値を用い、平均化されるように調整されています。
では、アメリカン・リーグの投手をWARで比較してみましょう。
2021年の場合
1. ロビー・レイ 6.5
2. ゲリット・コール 5.7
3. ランス・リン 5.3
※2021年はWAR1位のロビー・レイがサイヤング賞を獲得しました。
データ参照(投手): https://www.baseball-reference.com/leagues/majors/2021-pitching-leaders.shtml
URLをクリックし「WAR for Pitchers」をご覧ください。
2022年の場合
1. ディラン・シース 6.4
2. 大谷翔平 6.1
3. ジャスティン・バーランダー 5.9
4. アレック・マノーア 5.9
シース投手がトップです。当然サイヤング賞には打者の成績は反映されませんが、投手成績だけでも大谷翔平選手は僅差で2位です。バーランダー、マノーアよりも上位です。投手に専念していたら・・・と想像してしまいます。
そして大谷翔平選手はWARの順位はMVPもサイヤング賞も2位です。確率は低いかもしれませんが、ダブル受賞のチャンスとも言えます。ますます11月の発表が楽しみです。
データ参照(投手): https://www.baseball-reference.com/leagues/majors/2022-pitching-leaders.shtml
URLをクリックし「WAR for Pitchers」をご覧ください。
投票は記者がする
MVPは全米野球記者協会所属の記者(人間)60人による投票で決まります。AIが決められた指標に基づいて機械的に計算するものではありません。上記の成績も参考にすると思いますが、記者ひとりひとりの審査基準で投票します。
投票は1位には7点が加点されます。以下、2位票(4点)、3位票(3点)、4位票(2点)、5位票(1点)です。本命はバーランダー、シース、マノーアの3人の争いになると思いますが、ゲリット・コール、フランバー・バルデス、大谷翔平などの投手に上位票が入り、票がばらけますと順位は入れ替わります。2022年の大谷翔平選手が投手としてどの程度評価されるかが楽しみです。