ベース間の距離についての考察

2023年よりメジャー・リーグのベースのサイズが15インチ(約38cm)から18インチ(約46cm)に拡大されました。では塁間の距離は変わったのでしょうか?そして塁間の距離は90フィート(約27.3m)がどのように決定したのでしょうか?

歴史をひも解く

現存する最も古い野球のルールであるニッカー・ボッカー・ルールは1845年に成文化されましたが、その時の記述では本塁から二塁の間、および一塁から三塁の間は「42歩」と規定されました。

その1歩の定義は?

学識者の見解では、1歩を3フィート(約91.4cm)と推定し、塁間の距離は約89フィートになるという結論に達しました。
(※直角二等辺三角形の短辺が63フィート(42歩×3フィート÷2)とし、ピタゴラスの定理から算出すると 斜辺は約89.1フィートです。)

これは、現代野球の創始者と言われるアレクサンダー・カートライト氏 (ニッカー・ボッカー・ルールの開発者として知られている人物) のアメリカ野球殿堂入りプラーク(楯)にも「ベース間は90フィート離してください」と書かれています。

これは本当に正しいのでしょうか?

MLBの歴史家ジョン・ソーン氏は、「当時のノア・ウェブスターの「アメリカ英語辞典」の「1歩」の定義は2 フィート半でした。」と指摘しています。
仮に1歩が2.5フィートとしますと、ピタゴラスの定理から塁間の距離は74.25フィートしかありません。そしてソーン氏の調査によると、1850年代半ばまでは塁間は75フィートが標準だったようです。

この時代は野球道具、特にボールの質が違いました。

その後、1850年代後半から野球のボールは硬式球に変わりました。「ボールの硬さと弾力性が増すと、ボールはより遠くに飛び、遠くに投げられるようになりました」とソーンは書いています。この変化により野球場のサイズも拡大しました。

ニッカー・ボッカーズに影響力のあるもう1人のメンバー、ダニエル・ルシウス「ドク」アダムスは、1850年代に塁間を90フィートに設定したと言われました。

アダムスは1896年に、「私は、この問題を検討した後、最初の野球規則の草案を提示し、大部分採用されました。その際に塁間の距離は90フィートに決定しました。この距離の決定の唯一の根拠は、「本塁から二塁まで、一塁から三塁までが42歩でなければならない」というものでした。」

このようにプロ野球の創生期には、ホームベースの形状や一塁ベース、三塁ベースの配置の変更などがあり、ベース間の距離が変更されています。

ベースの配置も違っていた

1845年から1874年にかけて、ホーム・プレートは一部がフェアと一部がファウルの両方に置かれていました。その後1875年と1876年には、ホーム・プレートはファウル・ゾーンに移されました。そして1877年にフェア・ゾーンに移され現在に至っています。 (※1900年まではホーム・プレートは現在の五角形ではありませんでした。)

一方、一塁ベースと三塁ベースは半分がフェア・ゾーンで半分がファウル・ゾーンに置かれていました。1887年になってフェア・ゾーンに移動されました。

以上のような変遷によりベース間の距離が何度も変わったことになりますアダムスが一貫して発言していた塁間90フィートは…どこかから…どこかの距離だったのかという疑問が湧きます。

塁間の距離の定義

1850年代半ばから1880年代半ばまで、ベースの中心からベースの中心までの距離が90フィートでした。 (ホーム・ベースが円形だった時もベースの中心から測定していました。)

前述の通り1887年の1塁ベースと3塁ベースの移動により、90フィートの測定方法が変わりました。 ホーム・ベースの中央から一塁ベース、三塁ベースの遠い方の端までの距離、 そして二塁ベースの中心から一塁ベース、三塁ベースの二塁べ―スから遠い方の端までの距離です。

一塁ベース、三塁ベースの端から中心までが7 1/2インチでしたので、この変更によりベース間の実際の距離は7 1/2インチ短くなりました。このように1900年にホーム・ベースがダイヤモンドの形にきちんと収まる五角形になったとき、本塁から1塁と3塁の測定方法が再び変わりました。

そして2023年ベースのサイズが大きくなりました。

新しいベースは3インチ大きくなりましたが、ベースを置く場所は変更されていません。またホーム・プレートのサイズも変更されていないため、90フィートの距離には影響されません。 大きくなったベースのサイズはすべてベースの内側方向に拡張されます。

まとめましょう!

ホーム・ベースから一塁ベース、ホーム・ベースから三塁ベースの最短距離

・旧ベース(15インチ):87 フィート、3 インチ
・新ベース(18インチ):87 フィート

しかし、新旧どちらの場合も、ホーム・ベースの下端から1塁ベースと3塁ベースの後ろの角までの距離は90 フィートです。

一塁ベースから二塁ベース、二塁ベースから三塁ベースの最短距離

・旧ベース(15インチ):88 フィート、1.5 インチ
・新ベース(18インチ):87 フィート、9 インチ

しかし、新旧どちらの場合も、一塁ベースと三塁ベースの後ろの角から二塁ベースの中心までの距離は90フィートです。

ベース間の最短距離は90フィートではありません。90フィートを規定するるルールと最短距離は違います。 恐らく私たちは皆、このルールを把握していなかっただけです。

いずれにせよ、ベース間の距離は大まかに定義するならば90フィートです。ベースのサイズが大きくなってもこれは真実です。

(※このコラムはこちらの記事を参考にしました。)

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