2023年に導入された新ルール、ピッチタイマー、守備シフト制限などで野球は変わったのでしょうか? まもなくレギュラー・シーズンが終了しますので、ここで評価してみます。
試合時間の短縮
試合時間の短縮が明確
2023年の9イニングの平均試合時間は2時間40分で、2022年と比較しますと24分短縮しています。1985年の平均試合時間2時間39分と同等です。2021年は実に3時間10分で過去最長でしたが、これよりも30分短縮されたことになります。
導入当初よりも後半の方がやや長時間に
選手が新ルールに慣れるにつれて試合時間は若干長くなりました。シーズンの最初の3週間の9イニングの平均試合時間は2時間38分でした。しかし直近3週間の平均時間は 2時間44分でした。
あるベテラン投手のコメントでは、最初はピッチ・クロック違反をしないように少しでも速く投球していましたが、今では許された時間をぎりぎりまで使って余裕をもって投球できるテンポを身に着けたようです。
ピッチ・クロック違反
年間を通じてならすとピッチ・クロック違反は減少
選手たちは試合を重ねるごとに新ルールに適応しました。最初の100試合では、1 試合あたり0.87件の違反がありましたが、 直近の100試合では0.34件でした。慣れることで違反を回避できるようになりました。
違反の規定時間は適切である
走者無しの状態で15秒以内、走者有りの状態で20秒以内での投球動作開始は短いという統計的証拠はありません。 投手は投球開始時のタイマーの残り時間は平均して6.5~7.8秒でした。つまり規定時間の半分の時間で投球動作に入っています。
ピッチ・クロック違反は守備側で多発
ピッチ・クロックは投手、捕手の守備側だけでなく、攻撃側のバッターにも採用されましたが、違反の71.1%は投手と捕手の守備側で発生しており、打者による違反は28.9%でした。ちなみに大谷選手は1試合で投手、打者の両方でピッチ・クロック違反を犯した最初の選手です。
シチュエーション別の違反割合
投手のピッチ・クロック違反は約70%ですが、その内訳は以下の通りです。走者無しの状況での違反が最も多く34.1%です。
ピッチ・クロックの弊害は?
ピッチ・クロック採用によるケガ
ピッチ・クロックを採用することで選手のケガのリスクが増えたという証拠はありません。
2023年と2022年のシーズンを比較した場合、投手と野手ともに負傷者リストの登録件数は減少しています。ただし新型ころなウィルス感染による離脱は除外します。
ピッチ・クロック採用後も投手の起用法は変わらない
投球ペースのスピード・アップにより先発投手が採用前より早く疲労したり、疲労が長びくことはありません。
AVE. PITCHES:先発投手の平均投球数
MEDIAN PITCHES:先発投手の投球数(中央値)
AVE. OUTS:先発投手の平均アウト獲得数
MEDIAN OUTS:先発投手のアウト獲得数(中央値)
% OF 5+IP:先発投手が5回以上登板した割合
盗塁数の増加
ピッチ・クロック、牽制球数の制限、ベース・サイズの拡大により盗塁数は増加しました。
盗塁試数は2022年の1.4件から、2023年には1.8件に増加しました。そして成功率80.4%で、2022年の75.4%から増えこれはMLB史上最高値です。
牽制球数の制限により、2022年の1試合あたり平均牽制球は6.0回から2023年は4.9回に減少しました。
牽制死も増加
牽制球の制限により、幾人かのランナーは大きなリードを取ったのでしょう。2023年のシーズン通算牽制死324 回は、2019年の291回、2021年の270 回、2022年の271回よりも多いです。
盗塁成功率は、2度の牽制後は78%でしたが、牽制無しの場合は80.6%でした。また、投手が3回目の牽制でランナーをアウトにできないと、自動的にボークになりますが、この違反は1試合平均0.1回未満です。
守備シフトの禁止
ヒットの確率が増加
極端な守備シフトを禁止することによりボール・イン・プレー打率は、2022年シーズンの.290から2023年には.297にアップしています。
極端な守備シフトは特に左打者に対して採用されたことを考えますと、左打者のボール・イン・プレー打率は、2022年の.283 から2023年には .295 に向上しました。
守備シフト違反
2023年シーズンにプレーされた40,000イニング以上の中で、守備違反は3件だけでした。通常の守備位置に戻すだけの事でしたので、殆ど違反はありませんでした。
(※このコラムはこちらの記事を参考にしました。)