2023 年にいくつかの新しいルールが採用されました。その中で投手の牽制球の回数制限ならびにベース・サイズの拡大はゲームの進行のみならず、盗塁の増加により、アグレッシブなプレーへと発展しました。
2023年のランナーは2022年と比較し1,072回も多く盗塁を試み、その成功率は80.2%でした。これは両リーグとも史上最高の成功率です。参考までにプレー・オフの盗塁成功率は82.6%でした。
例えばロナルド・アクーニャ・ジュニア選手の素晴らしい成績の一部分は、走力が十分に発揮できた点と言えます。 この結果を踏まえ2024年は、キャッチャーの走者をアウトにする能力、走者を走らせないピッチャーの能力が、重要視され対策が練られることを意味します。
刺殺能力
Statcastの数値を見ると盗塁を防ぐことができた最も優れた捕手が誰なのかはわかります。 今コラムでは、盗塁を防ぐ能力の高い選手について話を進めたいと思います。
盗塁王を獲得し、長年監督を務めたデイビー・ロペス氏はかつて「投手は素早く捕手にボールを届けなければ、捕手に刺殺のチャンスはない」と述べています。
この点から盗塁を阻止する9つのポイントをご紹介します。
注視する点
盗塁の可能性を抑えるには、ランナーのリードを最小化する能力と、投球前の動作が牽制級が来るのではないかと思わせる能力があるますが、その両方の能力が必要です。
投球ごとの走者の走るスピード、盗塁の頻度などの情報を集めます。これら情報と対比し、投手の投球や牽制の能力がどの程度、アウト(牽制時や盗塁時)に貢献しているかを解析します。
一例として6月にグレイバー・トーレス選手がドジャースのボビー・ミラー投手からの盗塁について考えてみましょう。 ミラー投手はトーレスの盗塁を阻止する素振りが無かったので、トーレス選手は投手が投球動作前にスタートを切っていました。 (※ミラー捕手が二塁に送球する時には、トーレス選手は一塁から約38フィート(約11.6m)進んでいました。塁間の距離は90フィート(約27.4m)です。)そのためドジャースのウィル・スミス捕手は送球することすらできませんでした。 盗塁を許したのはミラー投手の責任です。
たとえ盗塁が成功しても、投手の動作に怠りがなければ評価を下げる事はありません。 シカゴのニコ・ホーナー選手が盗塁したケースではジェイク・アービン投手に抜かりはありませんでした。結果だけを見ると ホーナー選手盗塁に成功しアービン投手に対する盗塁とみなされますが、ケイベルト・ルイス捕手が送球時にボールを落としたためです。投手には責任がありません。
見逃されそうですが、投手は走者が盗塁をしなかった(させなかった)ことも投手のスキルとして評価されます。2023年ホワイトソックスの先発投手ディラン・シース投手は一塁にランナーを置いた状態731球も投球しています。許した盗塁は13個でした。
過去2年間のパフォーマンス
2022年と2023年の2年間盗塁を阻止する能力に優れている投手を見てみましょう。データは2016年まで遡ります。2022年から2023年にかけて進塁阻止という点で最も優れていた投手は以下の通りです。
+14: デビッド・ピーターソン(メッツ)
+10 :ザック・グレインキー(ロイヤルズ)
+10 :パトリック・サンドバル(エンゼルス)
+9 :カイル・ブラディッシュ(オリオールズ)
+8 :ザック・ギャレン(D・バックス)、ディラン・シーズ(ホワイトソックス)、コール・アービン(オリオールズ)、他数名
逆に進塁を許してしまう投手は以下の通りです。
-26: ノア・シンダーガード(ガーディアンズ)
-18: アダム・オッタヴィーノ(メッツ)
-16: マイケル・コペック(ホワイトソックス)
-15: ローガン・ウェッブ(ジャイアンツ)
-15: アーロン・ノラ(フィリーズ)
-15: ケビン・ガウスマン(ブルージェイズ)
リードをさせない能力
ランナーがベースからリードする距離も盗塁成功率に影響するファクターと言えるでしょう。リードを最小化させている投手はやはり左利きが多いようです。
リード最小:9.6 フィート(約2.92m)
ウェイド・マイリー(ブルワーズ)、マックス・フリード(ブレーブス)
リード最大:16.8フィート(約5.12m) / 15.8フィート(約4.82m)
アダム・オッタヴィーノ(メッツ)/ ノア・シンダーガード(ガーディアンズ)
両者には7フィート(約2.13m)以上の差があります。ベストの2人は左利き、ワーストの2人は右利きです。! 各投手に対する個々の投球を例として使用すると、次のようになります。
しかし盗塁阻止はリードする距離だけの問題ではありません。打者と対峙した時にすぐにプレートを踏む投手と、時間をかけてプレートを踏む投手がいます。前者はランナーが十分なリードを取る前に投球準備に入っていますので、盗塁の難易度が上がります。
この点でも比較してみましょう。
リード最小:0.5 フィート(約0.15m)
ブルックス・ラリー(メッツ)、マックス・フリード(ブレーブス)
リード最大:6.4フィート(約1.95m) / 5.7フィート(約1.74m)
アダム・オッタヴィーノ(メッツ)/ ノア・シンダーガード(ガーディアンズ)
後者の投手の場合、ランナーは投手がプレートを踏む前に2m近くリードができ、盗塁のチャンスを伺う時間があります。この点も前者は左利きで、後者は右利きです。
デビッド・ピーターソンはなぜ優れているか?
盗塁阻止という点ではメッツの左腕投手は過去2年間で最高であしたし、過去4年間でも最高でした。
仮にランナーが盗塁に成功したとしても、捕手の捕球や送球の問題であれば投手には責任はありません。このようなケースでもピーターソン投手には盗塁阻止に加点されています。それでもピーターソン投手は盗塁阻止ポイントが1位ではありません。ランナーのリードを最小化し、そもそもランナーの盗塁機会が少ないためポイントを稼げていないだけのことです。
David Peterson does the snap throw for his 5th pickoff of the year! pic.twitter.com/xaZ0CvBOah
— SNY (@SNYtv) September 15, 2023
2024年は投手陣がどのように対策を立てるのかを注目しましょう。
(※このコラムはこちらの記事を参考にしました。)