MLBのドラフト1巡目の指名順位を決定する方法はユニークです。二刀流での出場を可能にした大谷ルールに象徴されるように、逐次ルールに手を加えてファンの好奇心を満たす工夫に余念がありません。常にチャレンジャーです。
2024年ドラフト1位指名決定方法
”ガーディアンズがドラフト抽選に勝利し来年のトップ指名権を確保”
というタイトルのニュースが発信されました。
ウィンター・ミーティングで開催されたメジャー・リーグのドラフトの抽選でガーディアンズが2024年ドラフトの全体1位指名権を獲得しました。 過去のドラフトでは全体2位の指名権は5回獲得できたクリーブランドですが全体1位の指名権を得たのは初めてです。
ガーディアンズが1位指名権を獲得できる確率は2.0%で、これは全30チームで9番目に高い確率でした。2位指名権を得たレッズの同確率は0.9パーセントで13位でした。ガーディアンズが1位、レッズが2位指名権を獲得する組合せのオッズはわずか0.02%でした。競馬に例えますと万馬券に匹敵します。
After winning the #MLBDraft Lottery, the @CleGuardians will select first in the 2024 MLB Draft. pic.twitter.com/AcOmeRhij7
— MLB (@MLB) December 5, 2023
第1ラウンドの指名順位
・上位6チームの指名はオッズの重みづけを考慮し抽選によって決定します。
・7位~18位は、抽選に外れた12チームからレギュラー・シーズンの成績下位チームが上位指名権を得られます。
・19位~30位は、ポスト・シーズンに進出したものの、早くに脱落したチームが上位指名権を得られます。ワイルドカード敗者、ディビジョンシリーズ敗者、チャンピオンシップシリーズ敗者に該当するチームは分配金を受取った額が多い方が上位になります。
ポスト・シーズンに進出できなかったチームとオッズ
抽選、オッズという単語が並びましたが、指名順位はどのように決められるのでしょうか?
まず、2023年にポスト・シーズンに進出した12チームは抽選の対象外です。残り18チームで抽選を行いますが、重みづけによりレギュラー・シーズンの成績が悪いチームには高いオッズが与えられます。
オッズ順位 | チーム(勝敗) | オッズ |
---|---|---|
1 |
アスレチックス (50-112) |
18.3% |
1 |
ロイヤルズ (56-106) |
18.3% |
1 |
ロッキーズ (59-103) |
18.3% |
4 |
ホワイトソックス(61-101) |
14.7% |
5 |
カージナルス (71-91) |
8.3% |
6 |
エンゼルス (73-89) |
6.1% |
7 |
メッツ (75-87) |
4.3% |
8 |
パイレーツ (76-86) |
3.0% |
9 |
ガーディアンズ (76-86) |
2.0% |
10 |
タイガース (78-84) |
1.6% |
11 |
レッドソックス (78-84) |
1.2% |
12 |
ジャイアンツ (79-83) |
1.0% |
13 |
レッズ (82-80) |
0.9% |
14 |
パドレス (82-80) |
0.7% |
15 |
ヤンキース (82-80) |
0.6% |
16 |
カブス (83-79) |
0.4% |
17 |
マリナーズ (88-74) |
0.2% |
18 |
ナショナルズ (71-91) |
0.0% |
オッズ1位~3位
まず勝率が下位3チームには同じオッズ(18.3%)が与えられます。
・アスレチックス、ロイヤルズ、ロッキーズが下位3チームです。
オッズ4位~18位
4位のチームで勝敗が同率のチームにつきましては、2022年の成績の下位チームが優先されます。
・パイレーツはガーディアンズよりも上位。
・タイガースはレッドソックスよりも上位。
・レッズはヤンキース、パドレスよりも上位。
ナショナルズについて
では勝率下位5位のナショナルズのオッズは0%なのでしょうか?
ナショナルズは分配金を受取っています。そして2023年のドラフト全体2位指名の権利を持っていました。分配金を受取っているチームは2年連続してドラフト抽選には参加できないルールがあります。さらに原則10位以上の指名権も得られません。(※しかし他のルールを考慮すると10以上になる確率は0%ではありません。)
(※MLBの分配金の制度は収益の48%はチームが受取りますが、全チームの残り52%の収益金を足し合わせ30チームで均等に分配する制度です。)
ぜいたく税を支払ったチーム
ぜいたく税を支払ったチームで2023年にポスト・シーズンに進出できなかったチームは3チームあります。
・メッツ、ヤンキース、パドレス
この3チームは抽選に参加する権利はありますが、抽選で得た順位によってペナルティが課せられます。
・指名順が6位以上:ぜいたく税の課税が20%から30%にあがります。
・指名順位が7位以下:得られた指名順位より10位後退(抽選で7位でも指名順位は17位になります)
今回は3チームとも抽選順位が7位以下でした。
最終指名順位
指名順 | チーム | オッズの順位 |
1 | ガーディアンズ | 9 |
2 | レッズ | 13 |
3 | ロッキーズ | 1 |
4 | アスレチックス | 1 |
5 | ホワイトソックス | 4 |
6 | ロイヤルズ | 1 |
7 | カージナルス | 5 |
8 | エンゼルス | 6 |
9 | パイレーツ | 8 |
10 | ナショナルズ | 対象外 |
11 | タイガース | 10 |
12 | レッドソックス | 11 |
13 | ジャイアンツ | 12 |
14 | カブス | 16 |
15 | マリナーズ | 17 |
16 | マーリンズ | 対象外 |
17 | ブルワーズ | 対象外 |
18 | レイズ | 対象外 |
19 | メッツ | 7(抽選で9位) |
20 | ブルージェイズ | 対象外 |
21 | ツインズ | 対象外 |
22 | オリオールズ | 対象外 |
23 | ドジャース | 対象外 |
24 | ブレーブス | 対象外 |
25 | パドレス | 14(抽選で15位) |
26 | ヤンキース | 15(抽選で16位) |
27 | フィリーズ | 対象外 |
28 | アストロズ | 対象外 |
29 | ダイヤモンドバックス | 対象外 |
30 | レンジャース | 対象外 |
・1位ガーディアンズと2位レッズは低確率にも関わらず強運で指名上位を獲得しました。
・ぜいたく税を払ったメッツ、ヤンキース、パドレスの3チームは抽選で6位以内を獲得できませんでした。よって抽選順位より10位後退しました。
メッツ:9位から19位に後退
パドレス:15位から25位に後退
ヤンキース:16位から26位に後退
31位~33位
31位:Dバックス(コービン・キャロルが新人王を受賞)
32位:オリオールズ (グンナー・ヘンダーソンが新人王を受賞)
33位:ツインズ(ソニー・グレイの移籍の代償として)
Dバックスとオリオールズは、プレ・シーズン・トップ100のプロスペクトとして評価された選手を擁するチームに与えられるプロスペクト・プロモーション・インセンティブにより指名権を得ました。
開幕ロースターでシーズンをスタートした後新人選手が新人王を獲得する、もしくはMVPまたはサイヤング投票でトップ3に入ることで得られる指名権です。
ツインズは、クオリファイング・オファーを拒否した後にカージナルスと契約したソニー・グレイ投手を失った代償としてカージナルスのドラフト2巡目の指名権を得ます。今後他のチームもこの権利により2巡目の指名権を得るかもしれません。例えば大谷翔平選手が他チームに移籍した場合です。