アーロン・ジャッジ選手と大谷翔平選手。両選手は2024年11月21日(アメリカ時間)に発表されるMVPを獲得する可能性が極めて高いです。
では仮にMLB全体からMVPを1名選出すると仮定した場合、どちらが選出される可能性が高いのか? 記者投票は個人的な感情も織り込まれるでしょうから純粋に成績だけを比較してみましょう。
主な打撃成績の比較
出場試合数はほぼ同じです。主に1番バッターを勤めた大谷翔平選手の方が打数は多いです。つまり数字を積み上げる成績については有利です。三振数と盗塁死は数の少ない方を上位とし赤字が相手を上回っています。
主な打撃スタッツ
名前
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チーム | 試合数 | 打数 | 得点 | ヒット | 2B | 3B | HR | 打点 | 四球 | 三振 | 盗塁 | 盗塁死 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ジャッジ
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NYY | 158 | 559 | 122 | 180 | 36 | 1 | 58 | 144 | 133 | 171 | 10 | 0 | .322 | .458 | .701 | 1.159 |
大谷翔平
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LAD | 159 | 636 | 134 | 197 | 38 | 7 | 54 | 130 | 81 | 162 | 59 | 4 | .310 | .390 | .646 | 1.036 |
以上のスタッツからはジャッジ選手が8個、大谷翔平選手6個でジャッジ選手が上回っています。
拡張したスタッツ
ではもう少し掘り下げてみましょう。GIDP(ダブルプレイ数)、SO%(被三振率)は数字、率の小さい方を赤字としていますが、その他は数字、率の大きい方を赤字にしています。GO/AO(ゴロアウトとフライアウトの比率)は着色していません。
名前
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チーム | PA | HBP | SAC | SF | GIDP | GO/AO | XBH | TB | IBB | BABP | ISO | AB/HR | BB/K | BB% | SO% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ジャッジ
|
NYY | 704 | 9 | 0 | 2 | 22 | 0.64 | 95 | 392 | 20 | .367 | .379 | 9.64 | .778 | .189 | .243 |
大谷翔平
|
LAD | 731 | 6 | 0 | 5 | 7 | 0.78 | 99 | 411 | 10 | .336 | .336 | 11.78 | .500 | .111 | .222 |
略語 | 全表記 | 意味 |
PA | Plate appearance | 席数 |
HBP | Hit by Pitch | 死球数 |
SAC | Sacrifices bats | 犠牲バント数 |
SF | Sacrifices flies | 犠牲フライ数 |
GIDP | round into double play | ダブルプレイ数 |
GO/AO | Groundout to air out ratio | ゴロアウトとフライアウトの比率 |
XBH | Extra base hit | 長打数(2塁打以上) |
TB | Total base | 総塁数 |
IBB | Intension walks | 敬遠四球 |
BABP | Batting average on balls in play | ホームランを除いた打率 |
ISO | Isolated Power | 長打率 |
AB/HR | At bats per home run | ホームラン率 |
BB/K | Walk to Strike out ration | 四球と三振の割合 |
BB% | Walk Percentage | 四球率 |
SO% | Strike out Percentage | 被三振率 |
打順の違い、打席数の違いがありますので単純比較は簡単ではありません。しかし、BABP(ホームランを除いた打率)、Isolated Power(長打率)、At bats per home run(ホームラン率)などの長打に関わるパーセンテージ、BB/K(四球と三振の割合)、BB%(四球率)など選球による出塁に関わるパーセンテージではアーロン・ジャッジ選手が上回っています。
以上のスタッツからもジャッジ選手が6個、大谷翔平選手5個でジャッジ選手が上回っています。
アーロン・ジャッジ選手の打者成績はこちらをご覧ください(英語版)
大谷翔平選手の打者成績はこちらをご覧ください(英語版)
WARを比較してみる
選手を評価する指標として最近ではWAR(Wins Above Replacement)が注目されています。打撃、守備、走塁、投球の総合的な貢献度を数値で表します。数値はその選手が出場することでチームの勝利数を上乗せできるポテンシャルがあるかです。細かな計算はここでは省きますが、打者の代表的な数値を以下の示します。この数値でもアーロン・ジャッジ選手は大谷翔平を上回っています。
WAR | oWAR | dWAR | |
アーロン・ジャッジ(ヤンキース) | 10.83 | 11.66(1) | -0.9(182) |
ボビー・ウィット・ジュニア(ロイヤルズ) | 9.4 | 9.19(3) | 1.2(32) |
大谷翔平(ドジャース) | 9.22 | 9.24(2) | -1.7(197) |
グンナー・ヘンダーソン(オリオールズ) | 9.06 | 8.52(4) | 1.5(21) |
ジャレン・デュラン(レッドソックス) | 8.68 | 6.2(8) | 2.5(4) |
oWAR, dWARの( )内の数字は全選手中の順位です。
oWAR:打撃面でのWAR
dWAR:守備面でのWAR
(※EXPNのWARの情報はこちらをご覧ください。)
記録で比較
2022年のアーロン・ジャッジ選手はアメリカン・リーグのホームラン記録を更新する62本塁打/131打点を放ちMVPに輝いています。34本塁打/95打点、15勝/219奪三振を記録した大谷翔平選手を抑えての受賞です。バリー・ボンズ氏のMLB記録は更新できないものの、アメリカン・リーグの記録を更新したインパクトが大きかったと思います。
2024年の大谷翔平選手は50-50(50本塁打-50盗塁)の前人未踏の記録を更新しました。守備につかないDHではリーグMVPは厳しいと言われており、実際に2023年以前には受賞者はいません。2006年に54本塁打137打点を記録したデビッド・折ティス氏でもMVPを受賞できませんでした。
前人未踏の50-50にインパクトは多大です。ジャッジ選手の58本塁打は素晴らしい記録ですがアメリカン・リーグの記録62本塁打を更新した訳ではありません。この点での評価は大谷翔平選手が勝っていると言えるでしょう。
リーグの異なる両選手ですので、2024年のMVPの優劣はつけられませんが、突出した成績を残した1年であったことは事実です。