2024年のHall of Fame Weekendは7月20日~22日の3日間にわたりニューヨーク州のクーパースタウンで開催されました。筆者は7月17日の夜、クーパースタウンの最寄り空港の1つでニューヨーク州の州都であるアルバニー空港に入り、7月18日~19日の両日をクーパースタウンで過ごしました。
2024年にアメリカ野球殿堂入りを果たしたのは4氏です。
エイドリアン・ベルトレー
ロサンゼルス・ドジャースでメジャー・デビュー、シアトル・マリナーズ、ボストン・レッドソックスと渡り歩きテキサス・レンジャースで現役を終えました。メジャー通算21年で3,166本の安打を放っています。この本数はイチロー氏を上回っています。
トッド・ヘルトン
ロッキーズ一筋17年のフランチャイズ・プレーヤー。通算打率が.316、通算OPSが.953と長距離ヒッターであるにもかかわらず安定した打率を記録しています。2007年は松井稼頭央氏とチーム・メイトでありリーグ優勝を果たしています。
ジョー・マウワー
マウワー氏もツインズ一筋15年のフランチャイズ・プレーヤーです。2000年代にはイチロー氏と首位打者争いを繰り広げ、3度首位打者を獲得しています。これはイチロー氏の2度を上回っています。
ジム・リーランド
選手時代にはメジャーに上がることはできませんでした。しかし指導者として手腕を発揮し22年間の監督を経験し3度ワールド・シリーズに進出し1997年にはフロリダ・マーリンズでワールド・チャンピオンに輝いています。
集客数を分析
2024年のInduction Ceremonyには約28,000人のファンが集まったと報じられています。筆者が前回訪れた2019年は約55,000人の集客でしたので約半分の人数です。その前は2014年で約48,000人でした。歴代最もファンを集めたのは2007年の約82,000人でこの年の3分の1です。筆者の体感でも今年はファンの数が少ないと思いました。見方を変えるとファンが少ない分、野球殿堂博物館、Legend Parade、Induction Ceremonyを例年よりも余裕をもって見ることできました。
集客減の要因は何でしょうか? 筆者が過去3回参加したInduction Ceremonyを比較してみます。
年 |
集客数 |
野球殿堂入り(記者選出) |
2014年 |
48,000名 |
グレッグ・マダックス、トム・グラビン、フランク・トーマス |
2019年 |
55,000名 |
マリアーノ・リベラ、マイク・ムッシーナ、エドガー・マルチネス、ロイ・ハラデー |
2024年 |
28,000名 |
エイドリアン・ベルトレー、トッド・ヘルトン、ジョー・マウワー |
年 |
集客数 |
野球殿堂入り(VC選出) |
2014年 |
48,000名 |
ボビー・コックス、ジョー・トーリ、トニー・ラルーサ |
2019年 |
55,000名 |
ハロルド・ベインズ、リー・スミス |
2024年 |
28,000名 |
ジム・リーランド |
2014年と2019年は6名の殿堂入りに対して2024年は4名。殿堂入り人数が少ないのだからファンの参加人数も少なくなるのは当然です。殿堂入りの人数で割って平均しますと2014年は8,000人、2019年は9,170人、2024年は7,000人。平均しても2014年対比で1,000人、2019年対比で約2,200人少ないです。
個人的な見解ですが、2014年、2019年の投票対象にバリー・ボンズ氏、ロジャー・クレメンス氏、カート・シリング氏のビッグ3が君臨していました。3氏とも現役の成績では文句なく1年目で野球殿堂入りできます。野球殿堂入りの指標HOFmでも勝利への貢献度のWARにしても飛び抜けています。残念なことに3氏は違法薬物使用疑惑が問題視されたために野球殿堂入りは果たせませんでした。
それでも3氏は60~70%の得票率があります。彼らと競って野球殿堂入りするには、かなり突出した成績を残している必要があるでしょう。つまりエリート中のエリートでないと野球殿堂入りが難しい時期でした。2023年には3氏は投票権を失いました。そのため野球殿堂入りのボーダーが下がったと感じています。2024年に野球殿堂入りした4氏を蔑むものではありませんが、この点も集客に影響していると分析します。
2014年
人物 |
得票率 |
HOFm |
WAR |
グレッグ・マダックス |
97.2% |
254 |
106.6 |
トム・グラビン |
91.9% |
177 |
80.7 |
フランク・トーマス |
83.7% |
194 |
73.8 |
2019年
人物 |
得票率 |
HOFm |
WAR |
マリアーノ・リベラ |
100.0% |
214 |
56.3 |
ロイ・ハラデー |
85.4% |
127 |
64.2 |
エドガー・マルチネス |
85.4% |
132 |
68.4 |
マイク・ムッシーナ |
76.7% |
121 |
82.8 |
2024年
人物 |
得票率 |
HOFm |
WAR |
エイドリアン・ベルトレー |
95.1% |
163 |
93.5 |
トッド・ヘルトン |
79.7% |
175 |
61.8 |
ジョー・マウワー |
76.1% |
92 |
55.2 |
最大の壁
人物 |
得票率 |
HOFm |
WAR |
バリー・ボンズ |
66.0% |
340 |
162.8 |
ロジャー・クレメンス |
65.2% |
332 |
139.2 |
カート・シリング |
58.6% |
171 |
79.5 |
所属球団
もう1つは4氏が野球殿堂入りで指名したチームです。野球殿堂入りの際にレリーフ(楯)を飾りますがその際にキャップにチームのロゴを入れます。(入れない選択もできますが)
ベルトレー氏はレンジャース、ヘルトン氏はロッキーズ、マウワー氏はツインズ、リーランド氏は在籍した複数のチームに敬意を表してロゴを入れない判断をしました。ヤンキース、ドジャース、レッドソックス、ブレーブスなどの人気球団に所属していたら集客があがったかもしれません。
2025年はどうなるのでしょうか?
前での3氏のように突出した実績があるのも関わらず、違法薬物使用疑惑で野球殿堂入りを果たせていないアレックス・ロドリゲス氏、マニー・ラミレス氏が壁になります。この壁を越える可能性があるのは、イチロー氏、CC.サバシア氏と見ています。
2025年
人物 |
得票率 |
HOFm |
WAR |
アレックス・ロドリゲス |
34.8% |
390 |
117.6 |
マニー・ラミレス |
32.5% |
226 |
69.3 |
イチロー |
? |
235 |
60.0 |
CC.サバシア |
? |
128 |
62.3 |
4氏の実績は十分、所属球団もロドリゲス氏、サバシア氏はヤンキースに、ラミレス氏はレッドソックス、ドジャースに在籍経験があります。イチロー氏はマリナーズを選択するでしょう。所属球団は人気球団ですあり特にニューヨークとボストンはクーパースタウンに近いという地の利もあります。イチロー氏、サバシア氏に加え、まさかの選出があった場合には、2025年のInduction Ceremonyは盛り上がるポテンシャルが高いと思います。
2025年1月の殿堂入りの投票結果の発表、2025年7月27日のInduction Ceremonyを大きな期待を持って待ちたいと思います。日本人初のアメリカ野球殿堂入り達成のその時を。