日本時間2025年6月28日(土)、アメリカの野球殿堂入りセレモニーの約1ヶ月前にイチロー氏のトークショーが東京で開催されました。ミズノ株式会社主催の限定イベントで、抽選で110名の幸運なファンが参加しました。
イチロー氏が一般の人々を対象としたトークショーを開催するのは稀なこと、もしかしたら今回が初めてかもしれません。こんな貴重なイベントには是非参加したいと筆者は思い、応募しましたがあえなく落選。あきらめて別の予定を入れようと考えていましたが、約2週間後に三次抽選当選の連絡が入りました。運は私に味方してくれたようです。幸運にも本イベントの参加が叶いました。
イベント概要
タイトル:イチローに聞く「決断する時の思考」
・スペシャル動画先行上映
・トークセッション(MC:住吉美紀(フリーアナウンサー)
・参加者との記念撮影(S席の特典とは別に)
日時:2025年6月28日(土) 14:00~16:00
会場:109シネマズプレミアム新宿 10F
費用:Class S:¥100,000(12名)席は4列目
Class A前方:¥30,000(34名)席は1列~3列目
Class A工法:¥25,000(64名)席は5列目以降
特典:Class S:本人使用済の手袋(額入り)、イチロー氏と12名で記念写真
Class A:リストバンド(未使用片手)
東急シネマズの公式案内はこちらをご覧ください。
イベント開催前
受付
メインのイベントは14時開催ですが12:45から受付が始まりました。ほぼオンタイムに会場入りしますと、既に約20名のファンが受付を終えていました。受付は当選メールと同時に顔写真入りの身分証明書の提示が求められました。他のイベントでもこのような案内は事前にありますが、筆者自身の経験では当日身分証明書の提示をした記憶はほぼありません。転売や身代わり入場を厳格にチェックしているように思えました。
メインラウンジ
イベント会場は映画館ですが、プレミアムという名の通りVIP対応の会場です。開始までの1時間をラウンジでゆったりと待つことができます。バー・カウンターにはドリンクとスナックが用意されておりました。友人と飲食をしながらくつろぐことができるスペースです。
有難いことにラウンジで提供されたドリンク、スナックは映画館内に持ち込む事が許可されていました。
ラウンジの平面図はこちらをご覧ください。
展示コーナー
ラウンジ内には、展示コーナーもありイチロー氏の殿堂入り記念オーセンティックバットとグラブが展示されていました。この限定商品をファンは購入する事ができます。(※本情報はMIZUNOの公式サイトでまだ確認できません。イベント参加者限定販売か先行販売かもしれません。)
ラウンジでの撮影は限定的に許可されました。他人が写真に写り込まないように配慮した上で展示物は問題無いようです。
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メイン・イベント
Theaters-7
ラウンジからは4つの劇場にアクセスができます。本イベントはシアター7で開催されます。先に述べましたがラウンジで提供されたドリンク、菓子の持込は可能です。このルールは一般の映画館と同様ですね。
座席は革張りのふかふか椅子で体重を預けると背もたれが倒れます。両脇にはドリンクのカッブ受けやスナックが置ける程度のスペースが備え付けてあります。ですから隣席とはほどほどのスペースがありますので圧迫感は全くありません。
劇場内での録音、録画、写真撮影は禁止ですと言うアナウンスがありました。
シアターのイメージはこちらをご覧ください。
スペシャル動画
トークイベントに先立ち、おそらく未公開のスペシャル動画が放映されました。約30分ほどの動画でした。インタビュアーは言わずと知れた石田雄太氏です。イチロー氏が少年期から現在に至るまで使用してきたバット、グローブなどの野球道具の出会いと進化についてじっくりと語っています。
・少年期に各社の野球道具を比較したがMIZUNOがベストだった。この時期にいい道具に出会えたことは野球人生で重要だった。
・オリックス入団時から2年間は石嶺モデルのグローブを使用したが使い心地は良かった。3年目にようやくオリジナルモデルを作製した。
・グローブはボールがポケットに入ったと同時にすぼむ機能性を追求した。
・バットは多くの選手のモデルから篠塚モデルを選択した。見た目にも輝いていて、バットを持った感触もしっくりきた。ただし重心が先端寄りだったので少し手元寄りに移動させるマイナー・チェンジを行った。以降バットの仕様は変えていない。
トークイベント
基本的にトークテーマの「決断する時の思考」に沿って住吉美紀アナウンサーがリードでイチロー氏が語る展開でした。ただし冒頭にスペシャル動画に触れました。道具づくりは職人と選手の真剣勝負! お互いに対等な立場で意見を言い、最高の道具を作る。仕上がったグローブを手にした瞬間に、ゴールドグラブは取れたと確信した。この道具でタイトルを逃したら選手の責任である。
レーザービームが代名詞となったオークランドの試合。球場毎に芝生の状態が違うので気をつけなけらばならない。オークランドの芝は滑らないのでゴロの打球が失速する。だから自分から打球にアプローチをかけてグローブを出せば、ポケットに入ったら確実に捕球できるから、私(イチロー氏)は次の動作を早めに意識する事ができた。優秀な道具あってのプレーだった。
人生で大きな決断
・2001年にメジャーに移籍した決断
1996年からメジャー行きは考えていた。球団とは常々コミュニケーションを取っていたが最大の壁は仰木 彬監督。監督がNoと言えばメジャー移籍は叶わなかった。酒の席でたくさん飲ませてYesを取り付けた。
・2019年に現役引退の決断
前年のオープン戦で結果が出なかったこと、レギュラーシーズンでも結果が出ず5月に選手登録を外れや実践が遠ざかったことが、理由に上げられる。若い選手にチャンスを与える時期と悟った。結果的に2019年の判断は良かった。同年から世界的に蔓延した新型コロナウィルス。コロナ引退は避けられた。
決断で重要なこと
決めたことに後悔をしないこと。これは自分で決めることに尽きる。他人に意見を求めることは否定するものではないが、それでも最終的に自分で決めないと後悔する。
明確な目標を持つこと。目標のためには楽しいことを犠牲にする勇気、大切なものを切り捨てる決断が求められる。
失敗した決断
失敗しかけた決断はあるが、その決断をしなかったから失敗せず今に至ることができた。2007年に日本復帰の話があり実際に動いたが、この決断は逃げの決断であると悟り実行しなかった。
試合中のプレーで印象的な決断
サンフランシスコでのジャイアンツ戦。打者の打球が頭を越えるのはわかっていたが、捕球体勢を取ってランナーの進塁を遅らせた。一塁走者を三塁進塁に留める事ができ失点は免れた。
今の野球指導について
時代の風潮もあるかもしれなが、今の指導者は学生への接触におびえている。おびえているから真っ当な指導が出来ていない。だから学生はどんどん指導者に教えを乞う姿勢を示して欲しい。
また学校、教師、指導者が言えないならば、その役割を両親が担って欲しい。子供の頃に言い聞かせないと子供たちが大人になった時に決断できない人になってしまう。
今後の人生の決断
50歳を超えて人生が残り少なくなってきている。だから出来なくなる前に今やる。本気で身体を酷使すると言う考えで今を生きている。
会場の参加者へ年齢層を意識してのアドバイスは、大きな失敗が出来ないから慎重な決断をせざるを得ない。これまでの経験を踏まえ慎重ではあるが前向きな決断をして欲しい。
職人へのリスペクト
MIZUNOさんのイベントですから、スペシャル動画、トークイベントにはバット職人の久保田五十一氏、その技術を継承する名和民夫氏、そしてグローブ職人の坪田信義氏、その技術を継承する岸本耕作氏の話題も随時触れていました。
職人相手でも臆することなく改良点を進言するイチロー氏、それを寸分の単位で仕上げる職人たち。最高の道具は作り手と使い手の双方がしのぎを削って形になるものです。選手を引退後も現役に劣らぬトレーニングを継続し、バット、グローブの道具を使い続けるイチロー氏。技術を継承した職人たちと最高の道具の追求の足を止めることはありません。
職人たちへの最大で最高のリスペクトがイチロー氏の言葉を端々から感じられました。