2023年8月23日のレッズ戦で降板後の検査で、大谷翔平選手の右ひじ靱帯損傷が見つかったと報道されました。今期中の投手としての登板はしない方針が示されましたが、バッター大谷翔平は出場を続けています。
それ以降、再度トミー・ジョン手術を受けるのか? シーズン・オフのFAの契約の行方などの報道で、日々メディアは賑わっています。そして2023年9月4日のオリオールズ戦は試合前の練習には参加していましたが、打者としてのスタメンを外れています。
2023年残りの試合の出場、トミー・ジョン手術、オフのFAなど大谷翔平選手はどのような判断をするのでしょうか? ケガの具合と手術をすることは2024年のプレーに影響します。軽傷である事、早期完全復帰を願いつつ大谷翔平選手の動向に注目したいと思います。
トミー・ジョン手術
この手術は1974年にフランク・ジョーブ博士によってトミー・ジョン投手に対して行われました。手術名はトミー・ジョン投手の名前が付けられました。
多くの場合この損傷は、投球するときの激しい動作で、肘を繰り返し使用することで起こります。 手術では他の部位から摘出された新しい腱を移植します。上腕骨と尺骨に開けられた穴を通して8の字パターンに編み込まれるものです。
最初の手術の時点で、ジョーブ博士はトミー・ジョン投手が復帰できる確率を100分の1と見積もっていました。1974年の手術後、腕のリハビリに18ヶ月を費やしましたが1976年のシーズンに復帰できました。 そして46歳になるまでメジャー・リーグで投手を続ける事ができました。これは成功例ですが、その後手術を受けた投手7人はメジャー・リーグに戻れませんでした。
しかし時を経て現在では、手術後の数値が示されています。個人差がありますのであくまで平均的な数字として理解して下さい。
・完全回復の可能性:85~90%
・リハビリ期間(投手):約12~15ヶ月
・リハビリ期間(野手):約6ヶ月
大谷翔平選手の復帰予測
大谷翔平選手の場合、2回目の手術を受けた場合は上記のリハビリ期間よりも多くの時間を要する可能性があるという報道もあります。つまり9月に手術を受けた場合、2024年には野手として復帰できる可能性はあります。しかし投手としての復帰は早くとも2025年です。2018年オフにトミー・ジョン手術を受けた大谷翔平選手の二刀流完全復帰は2021年でしたから、この前例から完全復帰は2026年と見積もった方がいいかもしれません。
2023年にメッツからレンジャースに移籍したジェイコブ・デグロム投手も今年2回目のトミー・ジョン手術受けて2024年中の復帰を目指しています。
他の選手の実例
アトランタ・ブレーブスに所属したジョン・スモルツ氏は、2015年にアメリカ野球殿堂入りしています。トミー・ジョン手術を受けた選手としては初の殿堂入りをしています。 スモルツ氏は2000年に手術を受け、そのシーズンを完全に欠場しましたが、その後復帰し数年間クローザーを務め150セーブ以上を記録しています。そして再び先発投手を務めました。
スモルツ氏のトミー・ジョン手術後の成績
年 | 勝 | 負 | 防御率 | セーブ | 投球回 | 被打率 | WHIP |
2001 | 3 | 3 | 3.36 | 10 | 59.0 | .238 | 1.07 |
2002 | 3 | 2 | 3.25 | 55 | 80.1 | .206 | 1.03 |
2003 | 0 | 2 | 1.12 | 45 | 64.1 | .204 | 0.87 |
2004 | 0 | 1 | 2.76 | 44 | 81.2 | .245 | 1.08 |
2005 | 14 | 7 | 3.06 | 0 | 229.2 | .243 | 1.15 |
2006 | 16 | 9 | 3.49 | 0 | 232.0 | .251 | 1.19 |
2007 | 14 | 8 | 3.11 | 0 | 205.2 | .249 | 1.18 |
ダルビッシュ投手の場合
手術日:2015年3月17日
復帰登板:2016年5月28日(ピッツバーグ・パイレーツ戦で勝ち投手)
復帰登板までの間隔:約14ヶ月
前田健太投手の場合
手術日:2021年9月1日
復帰登板:2023年4月4日(マイアミ・マーリンズ戦で負け投手)
復帰登板までの間隔:約19ヶ月(試合スケジュールの関係で、平均よりも間が空いているように見えます)
ブライス・ハーバー選手の場合
手術日:2022年11月23日
復帰登板:2023年5月2日(ロサンゼルス・ドジャース戦で4打数0安打)
復帰出場までの間隔:約5ヶ月半
コーリー・シーガー選手の場合
手術日:2018年5月4日
復帰登板:2019年3月28日(アリゾナ・ダイヤモンドバックス戦で3打数1安打)
復帰出場までの間隔:約10ヶ月半
3回以上の手術を受けた投手
・ホセ・リホ (5回)
・ジェイソン・イスリングハウゼン (3回)
・ジョシュ・ジョンソン (3回)
・ジャロッド・パーカー (3回)
・ジョニー・ヴェンターズ (3回)
・スコット・ウィリアムソン (数回)
・チャド・フォックス (数回)
手術を受けた主な野手
・ロベルト・アロマー
・ジェイ・ビューナー
・ホセ・カンセコ(投球中に負傷)
・チュ・シンス
・ブライス・ハーパー
・コーリー・シーガー
田中将大投手の事例ではトミー・ジョン手術を受けずPRP療法で復活し、現在も現役投手として活躍しています。ケガの症状、体格など個人差がありますし、一級品のストレートと、多彩な変化球を駆使する大谷翔平選手は手術を受けての復帰を目指す判断をするのではないでしょうか?
いずれの判断をしても二刀流での完全復帰を願いたいと思います。